2011 Fiscal Year Annual Research Report
日本・イギリスにおける貧困問題や地域再生に向けた取り組み
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21730472
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
正野 良幸 京都女子大学, 家政学部, 助教 (90514167)
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Keywords | パートナーシップ / 社会的企業 / ガバナンス / 貧困問題 / 地域再生 / 地域住民 / 格差社会 / 作業療法士 |
Research Abstract |
日本では現在、経済不況の影響を受け、雇用状況の悪化や社会保障に対する不安が高まってきている。また、富裕層と低所得者層との格差が広がり、格差社会と呼ばれるような時代になってきている。このような日本の格差社会の改善を図るために、貧困問題への取り組みや地域再生が理論的にも実践的にも活発であるイギリスの取り組みを研究することが目的である。 平成24年3月16日~3月25日にかけて、イギリスのロンドンを中心にフィールド調査を行った。当初、ベルファスト地区を調査する予定であったが、アポイントがとれなかったためロンドンの調査が中心となった。訪問した地方自治体はラムベス区(Lambeth)であり、雇用部門の担当者からヒアリング調査を行った。また、ロンドンの社会的企業(Social Enterprise London)の担当者からもヒアリングおよび資料収集を行った。さらに、地域再生や貧困問題に関するガバナンスについて理解を深めるため、ミドルセックス大学(Middlesex University)のS.Syrett教授からもヒアリング調査を行った。 イギリスでは、保守党および自由民主党の連合によるキャメロン政権による政策が実施されており、公的機関による福祉政策よりも、民間およびボランティアによる福祉を重視している。特に、社会的企業(Social Enterprise)の行動が活発であり、行政と民間とのパートナーシップが強調されている。貧困者に対する就労支援では、これまで教育を受けてこなかった人々を対象に、パソコンの訓練や会計の勉強をするなど、社会復帰に向けた取り組みを実施している。また、ランベス区では、住民への支援に対してチームを編成しており、ソーシャルワーカー、コミュニティワーカー、作業療法士の3職種が中心となっている。作業療法士がメンバーの一員であることは珍しく、独自の支援を展開している。 今後は、このようなイギリスの取り組みがどのような影響をもたらしているのかを考察し、日本への示唆としていくことが目的である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回、当初計画していたイギリスの調査地区への訪問はできなかったが、その他の地域における調査を実施することができた。また、貧困問題や地域再生に関して社会的企業という新たな概念が出てきており、これらを調査するためには、ロンドンの調査が有効的であった。また、都市部における貧困地区での調査も可能であったため、おおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、日本の貧困地域における調査およびイギリスにおける調査を実施してきた。これからは、イギリスの資料やヒアリング調査をまとめていく予定である。貧困問題や地域再生に向けた取り組みについて、具体的にどのような制度・政策がとられているのか、また当事者への影響はどの程度であるのかについて検討していく。 当初掲げていた調査地区への訪問ができなかった部分については、インターネット等の資料を参考にし、情報収集していく。その情報をもとに、これまで実際に調査できた地区での取り組みに照らし合わせ、イギリス全体での貧困および地域再生にむけた取り組みを検討していく。 研究を続けていくうえで、疑問に思った点やわからない部分がでてきた場合は、インターネットのメール等を使用し、イギリスの担当者と直接やりとりを実施していきたい。イギリスにおける貧困および地域再生に向けた取り組みとその影響を踏まえ、日本における今後の対応策を検討していく。今後は、それぞれの調査内容を検討し、学会発表を行っていきたい。また、これまでの調査結果を、研究報告書および論文に掲載していきたいと考えている。
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