仕事をもつ男性家族介護者の実態分析とその支援政策に関する研究

2009 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 21730477
• Research Institution: Osaka University of Economics
• Principal Investigator: 森 詩恵 Osaka University of Economics, 経済学部, 准教授 (30341283)
• Keywords: 高齢者福祉 / 介護保険制度 / 介護休業制度 / ワークライフバランス

Research Abstract

本研究の目的は、仕事をもつ男性家族介護者に焦点をあて、ヒアリング調査を通してその介護と生活実態を明らかにし、仕事と介護の両立を図るために必要な支援政策を検討するものである。その背景には、男性家族介護者にとってこれまで女性の仕事とされてきた介護を担うことだけでもその厳しさは容易に予測できるうえに、一方で仕事では年齢的に役職などの重要な立場を背負っている場合が多く、介護休業制度は存在しても現実的にその両方を両立させることは非常に難しいなのではないかということからである。
平成21年度は、仕事をもつ男性家族介護者に対するヒアリング調査項目を検討・選定するため、まず先行研究を整理し、仕事をもつ男性家族介護者や介護支援専門員、訪問介護員及び企業に対してプレ・ヒアリング調査を行った。仕事をもつ男性家族介護者のヒアリングからは、仕事をしながら介護の中心となることは難しく、介護を行う人が複数いることが必要であるとの意見があった。また、企業においても育児休業であればある程度休業期間に目途が立つが、介護休業の場合は長期化することが予測され、なかなか介護者も取得しづらく、企業も育児休業に比べて取り組みにくい面があるとのことであった。また、介護支援専門員や訪問介護員に対するヒアリングでは、男性家族介護者は家事や介護の面で不十分なことも多く、また介護全体の問題として金銭的な問題により介護サービスを利用できない点が課題としてあげられた。以上のプレ・ヒアリング調査から、男性が仕事を持ちながら介護の中心を担うことの厳しさと企業の取り組みが進まない点、そして介護や家事だけでなく金銭的な問題も明らかになった。次年度は、介護休業を取得した男性家族介護者の職場での状況などについても、さらに深く調査したいと考えている。