2010 Fiscal Year Annual Research Report
仕事をもつ男性家族介護者の実態分析とその支援政策に関する研究
Project/Area Number |
21730477
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
森 詩恵 大阪経済大学, 経済学部, 准教授 (30341283)
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Keywords | 介護保険制度 / 男性家族介護者 / 介護休業制度 / ワークライフバランス |
Research Abstract |
本研究の目的は、仕事をもつ男性家族介護者に焦点をあて、ヒアリング調査を通してその介護と生活実態を明らかにし、仕事と介護の両立を図るために必要な支援政策を検討するものである。その背景には、男性家族介護者にとってこれまで女性の仕事とされてきた介護を担うことだけでもその厳しさは容易に予測できるうえに、一方で仕事では年齢的に役職などの重要な立場を背負っている場合が多く、介護休業制度は存在しても現実的にその両方を両立させることは非常に難しいなのではないかということからである。しかし、少子高齢社会においては、育児や介護における男性の果たす役割は非常に大きなものとなってきている。そのため、ワークライフバランスの視点から男性家族介護者の現状を明らかにし、総合的な介護者支援政策の検討が重要なのである。 本研究では、プレ調査として各地域の介護支援専門員、介護職員へのヒアリングを行い、男性家族介護者の現状及び男性が介護を行うことでの大変さをおおまかに理解した。また、積極的に育児休業取得を推進しているA企業の担当者の方にも話をお聞きした。そのうえで、仕事をもつ男性家族介護者(同居で主に介護を担当されている方及び別居で主な介護者を支援している方)、また老老介護の男性家族介護者の方にヒアリングを行い、介護を行うことになった背景、日常生活の状況、仕事と介護の両立、金銭的面、介護の負担感などについてお聞きした。ヒアリングから明らかになったことは、(1)介護保険制度が導入されて時間が経過したのちでもなかなかサービスにうまくアクセスできない状況、(2)金銭的な面での負担が重いこと、(3)男性が介護自体を行いにくい社会状況、(4)介護休業制度を利用しないでなんとか介護と仕事を両立させたいという気持ち、(5)仕事と介護の両立には会社の配慮、相談できる上司の重要性、(6)高齢者二人暮らしでは在宅介護は難しい状況、等であった。ワークライフバランスの視点から、今後も介護休業制度取得など男性家族介護者を支援する施策は重要であるが、それ以前に男性家族介護者の複雑な心理状況を把握し、明らかにすることが重要であるといえる。
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