2011 Fiscal Year Annual Research Report
潜在的自尊心の補償的高揚と集団価値の内在化の過程の検討
Project/Area Number |
21730491
|
Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
村上 史朗 奈良大学, 社会学部, 准教授 (30397088)
|
Keywords | 社会心理学 / 潜在的自尊心 / 社会的規範 |
Research Abstract |
平成23年度の研究目的は以下の2点であった。 (1)潜在的自尊心の補償的高揚が生じる条件を検討する (2)潜在的自尊心の補償的高揚が生じた場合に、アクセシビリティの高い領域で集団価値と自己の連合が強くなるという仮説を検証する まず、第1の目的である潜在的自尊心の補償的高揚について、人前で失敗した経験を想起させることによって、先行研究であるRudman et al.(2007)と同様の潜在的自尊心の補償的高揚が日本人サンプルでも生じることが今年度の研究を通じて確認された。一方、昨年度までの検討では、(1)知的能力が低いとするフィードバック、(2)死の脅威を意識させる、といった脅威によっては潜在的自尊心の補償的高揚は生じなかった。これらを併せると、対人的な脅威場面において補償的高揚が生じると解釈できる。単純に脅威を与えられると潜在的自尊心の補償的高揚が生じるのではなく、対人的脅威場面で生じることが示されたことがこの点に関する成果である。 第2の目的である、潜在的自尊心の補償的高揚を通じた集団価値と自己の連合の強化については、集団価値のアクセシビリティを高めるプライミングの操作が失敗し、具体的に検討ができなかった。このプライミングが単純な操作ではうまくいかないことがわかったことは1つの成果であるが、これが成功する条件を探ることは今後の課題となる。 また、当初目的に含まれていなかった副次的な研究として、規範的行為の性質の検討を行った。これは昨年度研究で得た規範に関する調査データの再分析を中心に行ったものである。結果を要約すると、法的規範では記述的規範(周囲の人が規範に従っているかに関する認知)が、社会的規範では命令的規範(その規範に従うべきであるという価値観)が、それぞれ規範的行為の頻度に影響していた。法的規範は命令的な、社会的規範は記述的な側面がそれぞれ強い規範であるが、それらの規範的行為の個人差を説明する要因としてはむしろ逆の側面の方が効果を持つことを示した点が、この検討に関する学術的意義である。
|
Research Products
(4 results)