Research Abstract |
本研究では,利害調整のゲーミング・シミュレーション(以下,ゲーミング)を完成させ,利害調整のプロセスを検討した。独自に開発した「ステークホルダーズ」は,集団において複数の選択肢から全員一致で1つを選択する際に、選択肢に関する個人の選好をリストアップし,それらを集団成員間で相互に比較しながら集団決定を行うゲーミングである。利害調整のプロセスをルールのバリエーションとして表現し,意見の類似性や選好の共有の仕方の違いを比較できるようにした。それ以外に,「説得納得ゲーム(杉浦,2003)」,「キープクール(杉浦・吉川,2009)」「クロスロード(吉川・矢守・杉浦,2009)」などの既存のゲーミングの活用方法の改訂を行い,利害調整にかかわるプロセスと結果の受容について検討を行った。特に地球温暖化とエネルギー問題に関し,風力発電の導入に関する利害調整について,「説得納得ゲーム」をフレームとしたゲーミングを開発・活用し,利害関係に基づく風車普及の説得と社会的受容との関係を明らかにした。さらに,その風力発電の導入に関するコンテンツを「ステークホルダーズ」に搭載し,風車の導入に関する各主体が利益とリスクを表明・共有することの効果を検討した。「キープクール」では,交渉時における感情の表明と共有が利害調整に与える影響について検討した。「クロスロード」については循環型社会編を開発し,問題当事者による利害調整のプロセスの記述から非当事者が問題を熟慮するシステムを開発し,実践を行った。以上のゲーミングは,利害調整の実験用ツールだけでなく,教育ツールとしての実施方法についての手順をまとめ,大学教育および実社会における問題発見・解決のツールとして整理し,活用と評価を行った。
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