2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730507
|
Research Institution | Kumamoto Gakuen University |
Principal Investigator |
真島 理恵 熊本学園大学, 商学部, 講師 (30509162)
|
Keywords | 社会的ジレンマ / 間接互恵性 / 協力行動 / 社会心理学 / 数理生物学 |
Research Abstract |
前年度までの研究では、社会的ジレンマ(以下SD)と個人間交換を連結する「連結戦略」が、SDを相互協力に導き適応的となるための理論的条件が「連結戦略に従事しない者も排除対象と見なす」ことであること、ただし、社会的交換状況を扱う2つの理論的枠組みである「ランダムマッチング状況」と「選択的プレイ状況」の間でその有効性が異なることが示された。このような連結戦略の挙動の差異は当初予測されていなかったものである。そこで平成22年度には、連結戦略の適応的基盤を解明し、人間の協力行動に関するモデルを作成する上で概念的に妥当なパラダイムを特定するために、連結戦略が各状況においてそれぞれどのように機能するのか、挙動の差を生む要因を特定するためのシミュレーションを行った。その結果、まずランダムマッチング状況に比べ選択的プレイ状況では、より広いパラメータ範囲で連結戦略が頑健な戦略として有効に機能し、個人間交換でもより高レベルでの相互協力が達成されることが明らかとなった。いずれの状況でも連結戦略は「SDで非協力者がいない状態」を出現させるが、選択的プレイ状況ではそれ以降もSDと個人間交換の双方で高レベルの相互協力状態を維持され続ける一方で、ランダムマッチング状況では個人間交換における協力率が次第に低下していく状態に陥ってしまう。そしてこれらの連結戦略の有効性の差異は、協力者同士の選択的な相互作用を可能とするという選択的プレイの特徴が相互協力を促進する一方で、ランダムマッチング状況と選別的な戦略の組み合わせはネガティブな評判の持ち主を急速に増大させるという、状況の特性によるものであることが示唆された。
|