2009 Fiscal Year Annual Research Report
インターネット利用における評判情報流通と社会関係資本に関する社会心理学的研究
Project/Area Number |
21730508
|
Research Institution | National Institute of Informatics |
Principal Investigator |
小林 哲郎 National Institute of Informatics, 情報社会相関研究系, 助教 (60455194)
|
Keywords | 評判 / 被験者実験 / マルチエージェントシミュレーション / 社会的ネットワーク / 社会関係資本 |
Research Abstract |
(1) 評判による社会的交換相手の選別と社会的ネットワークの関連について、マルチエージェントシミュレーションによる理論的検討を行った。これまでの評判研究では、潜在的な交換相手の評判(一次情報)だけでなく、その相手が過去にどのような相手と交換を行ってきたのかに関する情報(二次情報)を考慮することが互恵的な協力関係の発展に有効であることが示されている。本研究では、社会的ネットワーク構造を導入したシミュレーションによって、より現実的な設定の元で二次情報の有効性を確認した。その結果、先行研究で有効とされてきたStrictDiscriminator戦略(SD戦略)が優勢な状況では社会ネットワークが疎で排他的な構造となる傾向があり、高い協力率と豊かな包含的ネットワーク構造は背反的な関係にある可能性が示唆された。 (2) 二次情報が対人印象に対してもたらす効果について、一次情報(協力的・非協力的)と二次情報(過去の交換相手の評判)を操作したシナリオ実験をインターネットを介して行った。その結果、対人的印象のレベルは3段階に分かれることが示された。これは、一次情報と二次情報の組み合わせから人が1次元の対人印象を形成するのではなく、社会的望ましさと個人的親近感の2次元によって他者を評価することに由来する可能性が示唆された。 (3) 現実の社会的文脈(近隣と職場)における評判の良い人と悪い人について、その評判の根拠となる出来事や評判の主観的共有率を測定するためにインターネット社会調査を行った。テキストマイニングの結果、良い評判は生起率と主観的共有率が正相関するのに対し、悪い評判は負相関する対称性が見られた。これは、良い評判は協力的な行動を蓄積することで獲得できるのに対し、悪い評判は小さい生起頻度であっても低い信頼性を暴露することになるため広く共有されやすくなる可能性を示唆している。
|