Research Abstract |
今日,様々な産業分野で「忙しさ」「繁忙感」が問題となっている。一般的に「忙しさ感」というものは,単純な「業務の量」によると考えられている。しかし,組織における繁忙感を考える場合は,業務を行う者を取り巻く組織環境を総合的に捉える必要がある。 そこで本研究は,産業組織で働く従業員の繁忙感に影響を与える要因にはどのようなものがあるのか,さらに,それら各要因の関係はどのようになっているのかを明らかにするために,これまでの研究で得た繁忙感の影響要因に関する仮説モデルが妥当であるかどうかを質問紙調査により検証した。 まず,繁忙感とその要因に関する面接調査の結果から,要因に納得性を加えるなど,仮説モデルを若干修正し,それに合わせて質問項目を追加・修正した。続いて,複数の産業組織において質問紙調査を実施し,多変量解析によって修正した仮説モデルの妥当性の検証を試みた。 結果は概ね修正仮説モデルの妥当性を示す結果であった。但し,今後はデータ数の集積や,多様な組織での実施が求められる。また,全ての繁忙感要因が,全ての組織,全ての構成メンバーにおいて認められた訳ではない。そのため,業種,業態,組織構造,経験年数,その他属性によって,繁忙感影響要因の構造に差異が見られる可能性がある。更に,モチベーション,マネジメント,疲労感などと,繁忙感並びにその要因との関係も示唆された。 以上のように,組織における繁忙感要因とそれらの構造を確認出来たことは,繁忙感を制御する対策を導出する上で意義がある。また,マネジメントやモチベーションといった,産業心理学として既に研究の蓄積があるテーマとの関連が把握出来たことは,繁忙感という概念の心理学的位置付けを行う際に有益であり,今後の研究の進展の手がかりを得られる結果となった。
|