2010 Fiscal Year Annual Research Report
恐怖喚起アピールの視点による振り込め詐欺の被害過程及び被害防止対策に関する研究
Project/Area Number |
21730510
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
鈴木 護 科学警察研究所, 犯罪行動科学部, 主任研究官 (10356214)
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Keywords | 社会系心理学 / 社会問題 / 説得 / 詐欺 / 犯罪被害 |
Research Abstract |
今年度は、グループインタビュー調査によって各種の政府公報に関する印象評定を行った。これは、平成23年2月に振り込め詐欺に関する大規模な広報が、新聞折り込みチラシ・テレビCM・インターネット番組によって行われたことによるものである。さらに、中高年700名を対象としたインターネット調査によって、メディア接触と消費行動特性、振り込め詐欺の予防広報の認知状況、被害経験、被害伝聞を検討した。 グループインタビューの参加者は、振り込め詐欺広報の主要対象者層である60歳代を中心とする男女である。呈示刺激として、振り込め詐欺に関するチラシ・インターネット上の音声広報・テレビCM映像の3種類を用いた。参加者は、広報素材を呈示された直後に、個別に15項目の印象評定を行い、調査票に回答した。その後、視聴経験の有無や広報の訴求性と改善点等について、グループ全体で議論を進めた。結果として、集中的な政府広報であっても、認知度ほとんどないことが明らかとなり、中高年への広報伝達・浸透方策については、抜本的な見直しが必要なことが示唆された。テレビCMについては、説得力がある・生活に取り入れたいという評価が特に高い一方、音声のみの広報は、趣旨が分かりにくい・インパクトに欠けるという評価が目立った。なお対象者数が限られるため、個人の性格・行動特性と広報の印象評定との関連については、明瞭な結果を得るに至っていない。 インターネット調査では、認知的構造欲求の高低をもとに対象者を3群に分けて検討を行った。認知的構造欲求が高い群については、各種メディアに対する信頼感が高く、広報視聴経験が多い一方で、被害経験率も高くなっている。これは広報に接しているとしても、それが浸透して行動変容には至っていないことを示唆するものであり、現在の広報手法には改善の余地が大きいことが明らかとなった。
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