2009 Fiscal Year Annual Research Report
中学生の過剰適応傾向における非適応性のプロセスに関する実証研究
Project/Area Number |
21730513
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
石津 憲一郎 University of Toyama, 人間発達科学部, 講師 (40530142)
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Keywords | 過剰適応 / 自己概念 / 現実自己 / 理想自己 / ディスクレパンシー / 中学生 |
Research Abstract |
自己概念には理想自己と現実自己がある。さらにこれらの自己は自己視点から見たものと他者視点を踏まえたものの2種類に分類できるが,本邦では「重要な他者視点」を取り込んだ研究はほとんど見られない。本研究では過剰適応傾向が強い中学生の自己概念の特徴を検討することと,現実自己と理想自己の差異の学校不適応への影響性の検討を目的とした。中学生310名(1年生107名,2年生92名,3年生111名;男子154名,女子155名,不明1名;平均年齢13,54歳,SD.97)に調査結果を分析した。まず,「成績」「運動」「社会性」「暖かさ」「容姿」「勤勉」それぞれの自己概念について"自己視点"と"重要な他者視点"別に過剰適応との関連を検討したところ,概ね過剰適応群は適応群と同じ程度に自己概念を肯定的にとらえる傾向がみられ,これは特に自己視点において顕著であった。続いて,理想と現実とのギャップ(差異)がどのように不適応に関連するのかについて,適応群と過剰適応群とを比較した。その結果,適応群ではそうした差異が直接的にストレス反応や不登校傾向といった不適応傾向に影響を与えていた。一方,過剰適応群では差異は直接的には不適応傾向を説明しなかった。過剰適応群においては差異が自己否定的な性格特徴を刺激し,それらを解消すべく他者指向的に適応努力をすることで,間接的に不適応傾向が高められるという構図が示された。すなわち適応群も過剰適応群も自己概念の認知に違いはないが,理想と現実とに差異が生じた際,過剰適応群は他者の視線や期待を意識した行動をとることで,個人の不適応が高まっていくと考えられる。本研究から,適応群とは異なり,過剰適応群は他者指向的な適応方略によっても不適応を引き起こす可能性があるという新たな知見が得られた。
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Research Products
(3 results)