| Research Abstract |
本研究は,人間の行動の「不作為」の側面に着目し,不作為の認識や実行に関する人間の発達の過程を明らかにすることを目的としたものである。具体的には,社会性に着目し,道徳的判断やうそやだましに注目し,作為と不作為を対比させながら,検討を進めるものである。平成22年度は,2年目として以下のことを検討することができた。
第1に,不作為の「認識」の側面について検討を行った。平成21年度に続いて,先行研究や法律の専門書などを参考に,人間がどのような場合を不作為と認識しているのかを検討することで,一般的な人間が,日常的な場面で認識している不作為がより明確になり,文献展望に向けて,これまでの議論をさらに整理することができた。
第2に,不作為の「実行」の側面について検討を行った。平成21年度に4歳後半～5歳後半を対象に,だましに関する予備的な実験を行ったが,それに加えて,平成22年度には,2度の実験を行い,4歳前半と6歳を対象としたデータを得ることができた。その結果,4歳では,作為のだましと不作為のだましのいずれも実行が難しかったが,5歳になると,作為のだましを柔軟にできるようになる傾向が見られた。ただし,不作為のだましは,6歳においても難しかった。また,だましの実行と実行機能の課題の成績の間に関連力ある傾向が見られた。ただし,課題状況のわかりにくさという問題も残っており,平成23年度には,子どもにわかりやすい課題状況にして,不作為の「実行」の側面を詳細に検討していく必要があるが,平成22年度に基盤となるデータを得ることができた。
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