Research Abstract |
本研究は,人間の行動の「不作為」の側面に着目し,不作為の認識や実行に関する人間の発達の過程を明らかにすることを目的としたものである。具体的には,社会性に着目し,道徳的判断やうそやだましに注目し,作為と不作為を対比させながら,検討を進めるものである。平成23年度は,3年目として以下のことを検討することができた。 まず,平成22年度に続いて,文献展望に向けて,人間がどのような場合を不作為と認識しているのかを検討することで,一般的な人間が,日常的な場面で認識している不作為がより明確になり,これまでの議論をさらに整理することができた。 さらに,不作為の「実行」の側面について検討を行った。4歳から6歳を対象としたデータを得ることができたことから,これらの分析を行ったところ,4歳では,作為のだましと不作為のだましのいずれも実行が難しかったが,5歳になると,作為のだましを柔軟にできるようになる傾向が見られた。ただし,不作為のだましは,6歳においても難しく,4歳における作為のだましと同程度の成績だった。加えて,実行機能の課題とだましの成績の間に関連がある傾向が見られた。 以上より,不作為の認識と実行の両側面について,主として幼児期のデータから,子どもたちの発達の様子を明らかにすることができ,不作為の難しさが改めてクローズアップされた。
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