Research Abstract |
平成23年度は,本研究課題の完成年度にあたる。本研究は,基本的には先行研究の知見に基づきながらも本研究のために開発した標準ツールやデバイスを用いた開発研究という特徴を持つ。すなわち,本研究の展開は,教育心理学的知見に基づく標準ツールの開発に関する基礎的研究と,プログラム・ロジックモデルに基づく教育プログラムの開発と評価という実践的研究の2つの側面により構成される。本研究では,大学での授業実践を通した批判的思考力の育成プログラムを開発してきたが,平成23年度は,研究成果の発表を行った。まず,大学専門教育課程における,効果的なレポート作成支援の事例と,CSCLを用いた専門的文章の協同的読解活動の成果を,楠見・道田・子安(201D「批判的思考力を育む」に掲載した。また,批判的思考態度尺度の構成要素とその教育実践への応用例を,日本教育心理学会の自主シンポジウムで紹介した。この自主シンポジウムには,本研究課題の共同研究者である,京都大学の楠見孝教授,愛知教育大学の藤木大介講師にそれぞれ指定討論と話題提供として登壇していただいた。次に,認知科学特集号「批判的思考」のゲストエディタとして特集号の編集に携わった。これは,2011年3月に刊行されている。この中で,研究代表者の沖林は巻頭に掲載論文の紹介論文を掲載した。認知科学誌に限らず,これまでに日本の学術雑誌で批判的思考が特集されたことはないため,この特集号の発行は,批判的思考研究に対して重要な役割を果たすものである。
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