2009 Fiscal Year Annual Research Report
乳幼児の自己主張行動と親の両義的応答の共同発達過程:親の心理社会的状況の視角から
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21730527
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
竹尾 和子 Tokyo University of Science, 理学部・第一部・教養学科, 講師 (30366421)
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Keywords | 乳幼児の自己主張的行動 / 親の両義的応答 / 現場発信型理論構築 / 親の心理社会的状況 / 親子関係の共同発達モデル |
Research Abstract |
乳幼児期の自己主張行動と親の両義的応答の関係性、および、その背景としての親の心理・社会的状況の共同発達過程を明らかにするために、1歳前後になる子どもとその親への参与観察および親へのインタビュー調査を実施した。参与観察では、子どもの自己主張行動と親の両義的応答の相互作用を中心に、インタビュー調査では、自己主張行動をめぐる親子関係について、その背景としての親の心理社会的状況を中心に調査した。調査結果の分析においては、現象を探索的に捉えるためのコード(「子育て情報の入手経路」/「両親以外の子育てに関わる人々」/「親子間のコミュニケーション」/「歌を歌うこと」/「子ども側からのコミュニケーション」/「親側からのコミュニケーション」/「子どもの具体的行動」/「親の具体的行動」「親の考え」/「大人の間での意見の一致とズレ」)を設定し、これにより質的分析を行い、次の点が見出された。 (1) 自己主張的行動の多様性:自己主張という現象は、自己の感情表出、または他者に対して必要に応じて自己の感情や欲求を適切な形で表出する自己制御など、様々なレベルで捉えられ、各レベルの発生過程および時期も異なることが明らかにされた。今後、本研究では自己制御機能としての自己主張に焦点をしぼりその発生的観点からの検討をすることが必要であることが見出された。 (2) 乳幼児の自己主張と親からの応答性の不可分性:(1)で見出されたように、自己主張という現象は発達的にさまざまなレベルで捉えられるが、各レベル特有の自己主張の成立は、親からの応答性と不可分な関係であることが見出された。 (3) 社会的状況に埋め込まれた親子の共同発達過程:親子を取巻く社会的状況が乳幼児の自己主張と親の反応の共同発達過程に不可分な関わりをしていることが明らかにされた。更に、今後その点を明確にするために、社会状況が明確に異なる異文化との比較が必要であることが見出された。
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