Research Abstract |
本研究は,ジグソー法という学習者ごとに異なる資料・課題を分担して理解内容を交換・統合する協調的な学習法が,その他の協調学習法に比べ,学習を促進するかの検討,およびその過程の解明を行うものである.2009年度は,大学における数学教育及び認知科学教育を対象に検討を行った.その結果 ・ジグソー法は,全体としては解決困難な課題でも,解決可能な下位課題に分割して結果を交換・統合するため,課題の達成を保障すること ・目前の課題達成が保障されるだけでなく,下位課題についてわかったことを交換する中で,課題内容に関する概念的理解が進み,転移課題の解決も促進されること ・自分の担当部分を核として,理解内容が長期間にわたって保存されること がわかった.ジグソー法は,すべての学習者が同じ教材を順に学習する方法に比べ,各自が異なる教材を分担し,自分たちで内容を交換して再構成する点が特徴的である。そこで,前者と対比しながら,ジグソーで学ぶ学生の学習過程を詳細に分析したところ ・一人ひとりが自分の担当内容を理解しその結果を説明するという「課題遂行」に従事する一方で,他者の説明に対してやや広い視点からコメントする「モニター」役を取るという役割分担が見られ,分担する資料ごとにその役割の交替が生ずること ・それによって,各自が自分の意見を持った上で議論することが起きやすく,簡単には一つの意見へと収束しないため,かえって深い理解が促進されやすいこと が示唆された.一方で,ジグソーを用いないで全員が同じ教材を学習する条件では,教材理解を暗黙の前提としてしまうため,教材の詳細な検討が生じにくく,浅い理解にとどまることもうかがえた.
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