Research Abstract |
本研究は,ジグソー学習法という学習者ごとに異なる資料・課題を分担して理解内容を交換・統合する協調的な学習法が,その他の協調学習法に比べ,学習を促進するかの検討および過程の解明を行うものである.2010年度は,ジグソー法による学習過程の解明に重点を置いた.ジグソー法は,資料を分担してペアや小グループで理解を深める「エキスパート活動」,異なる資料の担当者が集まってわかったことを交換し全体をカバーする「ジグソー活動」,各資料内容を関連づけ統合し,予め提示された問いへの答えを出す「プロジェクト活動」の3段階に分かれる.詳細な分析の結果,次の2点が明らかになった. 1)通常のグループ活動では,よく発言する者とそうでない者との間に極端な発話量の偏りやその固定化が起きるが,ジグソー学習法では,特にジグソー活動やプロジェクト活動において,発話量が偏らず,主導的な役割と聴き手の役割が頻繁に交替すること 2)ジグソー法では,資料を関連づけた自分たちの統合的理解を,何度も吟味し再考する過程が通常のグループ活動より頻繁に見られること(これは特にプロジェクト活動時に観察される) 1)の結果は,メンバーの既有知識や言語化能力が発言量に直結するグループ活動と違い,ジグソー法では資料や課題の分担により,各自に専門性が人工的に割り振られるという社会的相互作用の組織化の直接的効果と考えられる.それは各自が自らの資料・課題理解に基づいて,他者の説明にコメントすることも保証し,それによって一度構築された統合的な説明を互いに再吟味し再考する2)の過程に繋がったと推察できる.今後は,この社会的相互作用が認知的に建設的な相互作用を引き起こす仕組みを一層詳細に解明する予定である.
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