2010 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者の認知機能の低下防止とライフスタイルとの関連に関する老年心理学的研究
Project/Area Number |
21730534
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
岩原 昭彦 和歌山県立医科大学, 保健看護学部, 准教授 (30353014)
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Keywords | 認知加齢 / 認知の予備力 / ライフスタイル / 高次脳機能 / 高齢者 / コホート研究 |
Research Abstract |
本研究の目的は、高齢者のライフスタイル、中でも特に情報通信機器の使用が、認知機能の維持やwell-beingに及ぼす影響を検討することであった。文通が認知機能の維持に有効であることが知られている。本研究では、文通では認知機能の維持に効果があるのに、携帯メールの使用では効果がないのかを実験的に検討した。具体的には、継続的に携帯メールを実験者と行う高齢者群と文通を行う高齢者群とを設定し、それぞれの群の高齢者の認知機能や生きがい感がどのように変動していくのかを1年間定期的に測定した。大学生と定期的に文通(文通群)やメールの交換(メール群)をしたところ、文通群の高齢者では半年後にPGCモラールスケールの得点が有意に上昇したが、メール群ではPGCモラールスケールの得点に変化が見られなかった。また、IADL得点や認知機能検査(言語流暢性検査、注意検査)の得点は、両群において介入前後で変動しなかった。 住民検診に参加した健常高齢者532名を対象者として、認知的活動状況および情報通信機器の使用状況が高齢者の高次脳機能検査の結果と関連しているかを年齢、性別、教育歴で補正した重回帰分析により検討した。本年度に採取したデータを前年度のデータに追加して分析したところ、前年度と同様の傾向が確認された。認知的活動状況が高まるとStroop課題と論理的記憶課題の遂行成績を向上させることが明らかとなった。また、情報通信機器の使用状況が高まるとD-CATとMoney道路図検査の遂行成績が向上することが明らかとなった。本研究の結果からは、認知的な活動に従事しているとエピソード記憶および実行機能の低下を減衰させ、情報通信機器を使用していると視空間機能および注意機能の低下を減衰させることが示唆される。この結果は、高齢者のライフスタイルのあり方が認知機能の維持に影響を与えることを示した従来の見解に一致するものである。
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Research Products
(4 results)