2011 Fiscal Year Annual Research Report
幼児における抑制機能と言語理解の発達の関連性の検討
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21730537
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
神長 伸幸 独立行政法人理化学研究所, 言語発達研究チーム, 研究員 (90435652)
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Keywords | 言語発達 / 実行機能 / ワーキングメモリ / 文理解 / 視覚的注意 |
Research Abstract |
本年度は、言語・コミュニケーション能力と実行機能の関連性を調べる調査の結果を解析し、学会で成果発表を行った。5歳児を対象に言語コミュニケーションに関する標準化テスト、短期記憶課題、抑制機能を測定する課題を実施した。課題成績間の相関関係から、短期記憶課題成績は言語コミュニケーション能力に全般的な影響を及ぼすことが明らかになった。一方、抑制機能の発達は言語コミュニケーション能力の中でも文字通りの理解以上の推論を行う場面やルールの理解などに影響することが示唆された。 また、視覚刺激から生じた注意の大きさや、視覚的注意が言語理解に与える影響を検討した。実験では、参加者の視点に応じて視覚刺激が変化するような状況を設定し、色の形容詞を含む文を聞いているときの視覚文脈の変化を捉えるために眼球運動計測を行った。その結果、オブジェクトの揺れによる単純な視覚的注意の誘導を行うと、ターゲットおよび競合オブジェクトの注視確率が文を聞き始めた時点で変動した。しかし、文を聞いてからのターゲットオブジェクトへの注視確率の上昇の仕方には注意の誘導が影響しなかった。さらに、色によって二つのオブジェクトが対照性を形成するような視覚文脈でも視覚的注意の誘導効果を検討した。その結果、注意の誘導によって、聞き手が語用論的解釈を適用していると考えられるような眼球運動パターンがより顕著にみられることが分かった。つまり、視覚的注意の誘導が語用論的解釈の適用を強めたと考えられる。このような結果は、視覚的注意の変化が単語の検索プロセスのような処理に影響するのではなく、形容詞の解釈の仕方のような高次の処理に影響することを示唆している。
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