2010 Fiscal Year Annual Research Report
感情制御研究の実験枠組みを用いてのバーンアウト(燃え尽症候群)メカニズムの解明
Project/Area Number |
21730545
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
小堀 彩子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (00432188)
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Keywords | バーンアウト / ヒューマン・サービス業 / 感情労働 / 情動知能 / パフォーマンス |
Research Abstract |
本研究では,バーンアウトの危険因子である感情労働に象徴されるようなヒューマン・サービス業(Human Service;以下HS業)の固有の職務に焦点を当て,その職務上の負担がどのようにHS業の心身に影響を及ぼすかについて実験によって検討した。具体的には,顧客の敵意に着目し,HS業従事者が顧客に敵意を向けられることがバーンアウトの主症状である情緒的消耗感や,生理的指標,パフォーマンスにどのような影響を及ぼすかを検討した。また,バーンアウトやパフォーマンスの低下を予防する個人の認知資源として情動知能を想定し,質問紙によって測定し,関連を検討した。実験では,実際の対人援助場面を設定するのは困難であったため,ディセプションの元,対人援助場面の録音を使用した。実験計画は次の通りであった。情緒的消耗感と生理的指標は,2(録音の聴取;聴取前/後)×2(情動知能;高/低)×2(顧客の態度;敵意あり/なし)の混合計画,録音の聴取は被験者内要因,顧客の態度と情動知能は被験者間要因である。パフォーマンスについては2(情動知能;高/低)×2(顧客の態度;敵意あり/なし)の要因計画であった。パフォーマンスは録音の内容の再生率で測定した。 検討の結果,顧客の話に耳を傾けること自体が従事者の情動知能に関係なく疲労感につながること,clから攻撃性を向けられることでよりその疲労感は高くなることが示された。 また生理的指標およびパフォーマンスについては,有意な差が見いだされなかった。本研究で用いた測度や実験場面の改善を行うことで,バーンアウトのメカニズムの解明のための実験方法が進展し,バーンアウトの予防・介入策への提案に資するさらなる知見が得られるものと思われる。
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