Research Abstract |
本研究は,大学生のソーシャルサポート向上のための心理教育プログラムの開発を目的とするものである。平成21年度は,そのための基礎研究として,ソーシャルサポート向上に関わるソーシャルスキルを明らかにするために調査を実施した。なかでも,他者への積極的なサポート提供と関連を持つスキルについて探索的に検討することを目的とした。2009年6月に大学生約700名を対象に質問紙調査を実施し,欠損値を除いた647名を分析対象とした。調査で用いた尺度は以下の3点である。1. 成人用ソーシャルスキル自己評定尺度(相川・藤田,2005),2. サポート提供尺度:福岡(1997)の尺度の一部を改変して用いた,3. サポート受容尺度:福岡(1997)の尺度の一部を改変して用いた。共分散構造分析に基づくパス解析を行った結果,家族へのサポート提供の多さは,主張性スキルの低さ,関係維持スキル,記号化スキルの高さと関連を有し,友人へのサポート提供の多さは,主張性スキルの低さ,関係開始スキル,関係維持スキル,記号化スキルの高さと関連を有していた。また,家族,友人いずれへのサポート提供ともそれぞれのサポート源からのサポート受容と強い正の関連を有した。さらに,主張性スキル,記号化スキルは友人からのサポート受容との間に直接的な関連を有したが,その関連の強さは,友人へのサポート提供を介した間接的な関連の方が強かった。以上のことから,家族との関係においては,関係維持スキルと記号化スキルを向上させることが,友人との関係においては,関係開始スキル,関係維持スキル,記号化スキルを向上させることが,それぞれのサポート源へのサポート提供を促進させ,最終的に個人の受容サポートを向上させることにつながる可能性が示唆された。これらの結果は,今後の介入プログラム作成において,介入ターゲットを決定する上で有意義な結果であったと言える。
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