Research Abstract |
本研究は,青年期にみられる行動化(acting-out)としての破壊的行動に対し,構造化筆記を用いた有効な介入法を開発することを目的とするものである。その際,従来提唱されてきた理論モデルに基づき,構造化筆記によって情動体験の回避を直面へと変化させていくことによって,破壊的行動という方略をより適応的な形態に置き換えることを目指す。 研究は,1.青年期破壊的行動への介入としての構造化筆記法の開発,2.開発された構造化筆記法についての効果検討,という2つのパートから構成される。研究開始年度である平成21年度にはその内,1.の一部を行った。具体的には,まず,文献の翻訳及びレビュー,また,学会や研究会において情報収集を行い,その結果を元に,構造化筆記法(案-1)の作成を行った。次いで,作成された構造化筆記法(案-1)について,心理学の専門家3名からの意見を求め,内容の検討及び修正を行った。その結果,構造化筆記法(案-2)が作成された。今後は,作成された案-2を用いて少数サンプルを対象とした予備実験を行い,そこから得られたデータを元に完成版を作成する予定である。 先行研究では,1.同じ治療期間で比較した際,問題を会話により扱うよりも筆記により扱う方が,より問題への直面を促すとされていること,2.行動化しがちな人は,相手を操作したり騙したりするために会話を用いる可能性があり,対面での介入の困難さが指摘されていること,3.困難を抱えた多くの人にとって,筆記的な介入法は比較的抵抗が少なく,アクセスも容易であること,などが指摘されている。よって,本研究を通し作成された構造化筆記法は,青年期に多発する破壊的行動への介入として,望ましい選択のひとつとなることが期待される。
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