Research Abstract |
前年度に実施した実験の中で,社会不安の低減をもたらすことが示唆された行動の頻度を高めるような介入を行い,行動上の変化が社会不安の低減をもたらすかを検討することを目的とした。 都内の私立大学に在籍する1-2年生128名に対し,Social Interaction Anxiety Scale (SIAS:金井ら,2004)を用いて,集団式の調査を実施した。全体の中で,社交不安得点が特に高かった者に対して,実験への協力を求めた。了承の得られた28名を各14名ずつ,実験群と統制群にランダムに割りつけた。実験協力者は,初対面の相手と2人1組で会話を行った。実験群に対しては,「視線を合わせる」「あいづちをうつ」「共感を示す」などの行動を実施するよう,事前に心理教育を実施した。統制群に対しては,普段通りの会話を行うように教示した。 その結果,どちらの群でも時間とともに主観的不安の指標は減少する傾向がみられたが,実験群において不安の低減までの時間が有意に短いことが示された。また,パフォーマンスの自己評価も実験群の方が高く,会話を行った相手による不安の評価も低かった。内観報告では,「課題を与えられたことにより,会話に集中できた」という意見が多く見られた。一方で,心拍や血圧の変化には有意な差は見られなかった。.このことから,生理的な覚醒状態では明確な差はなく,課題に対する評価や主観的成功確率への変化が不安の低下をもたらしたことが示唆された。
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