2009 Fiscal Year Annual Research Report
遂行機能障害の認知リハビリテーションと近赤外分光法を用いた訓練効果測定の試み
Project/Area Number |
21730566
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
柴崎 光世 Meisei University, 人文学部, 准教授 (00325135)
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Keywords | 脳損傷 / 遂行機能障害 / 認知リハビリテーション / 前頭葉 |
Research Abstract |
本研究は,前頭葉損傷者を対象に,遂行機能障害の改善をねらいとした認知リハビリテーションを実施し,その訓練効果を行動データと近赤外分光法(NIRS)による脳血流データの両側面から検討することを目的としたものである.平成21年度には,研究1として,遂行機能のうち,発動性機能の改善をめざした認知リハビリテーションとその訓練効果について検討をおこなった.発動性障害者では視線や注意を自発的に移動して環境内を探索しようとする行動が生起しづらく,刺激に対する反応遅延もしばしば認められる.そこで,研究1では,患者の視線や注意の自発的移動と反応性を促進させるために,画面上のさまざまな位置に呈示される標的刺激への迅速な反応を求める視覚探索課題を訓練課題として使用した.なお,本課題の前頭葉賦活課題としての妥当性については,大学生を実験参加者とした予備実験にて検討した.発動性障害をもつ前頭葉損傷者を対象に,約4ヶ月間に渡って,訓練課題を繰り返し実施する認知リハビリテーションをおこなったところ,訓練後では,標的刺激に対する患者の見逃し率(ミス率)や反応時間が低下し,患者の自発的な探索行動や外的刺激に対する反応性が訓練によってある程度改善することがわかった.また,NIRSデータの結果から,患者の訓練課題遂行時の前頭前野の血行動態が,測定部位の損傷の程度に影響されるものの,訓練後では全般に上昇する傾向が示された.さらに,本研究で実施した認知リハビリテーションの訓練効果は,別の前頭葉機能課題にも般化した.本研究の結果は,慢性期の前頭葉損傷者においても,直接刺激法に基づいた発動性リハビリテーションが患者の行動面及び脳血流面の双方に効果的である可能性を示唆しており,前頭葉損傷者の発動性障害や遂行機能障害を標的とする認知リハビリテーションの有効性を示すエビデンスとして位置づけられる.
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