2011 Fiscal Year Annual Research Report
遂行機能障害の認知リハビリテーションと近赤外分光法を用いた訓練効果測定の試み
Project/Area Number |
21730566
|
Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
柴崎 光世 明星大学, 人文学部, 准教授 (00325135)
|
Keywords | 脳損傷 / 遂行機能障害 / 認知リハビリテーション / 前頭葉 |
Research Abstract |
本研究は,前頭葉損傷者の遂行機能障害の改善をねらいとした認知リハビリテーション(CR)を実施し,その訓練効果を行動データと近赤外分光法(NIRS)による脳血流データの両側面から検討することを目的としたものである.平成23年度は,遂行機能のうち抑制機能を取り上げ,ストループ様葛藤課題を用いた抑制機能障害のCRを実施した(研究2).具体的には,刺激と反応の位置の適合性を操作する刺激反応適合性課題(SRC課題)を訓練・評価課題として使用し,研究2aでは,刺激文字(「左」または「右」)と反応に用いる手(左手または右手)の適合性,研究2bでは,刺激文字(「左」または「右」),刺激文字の画面呈示位置(左または右),反応に用いる手(左手または右手)の3つの適合性についてそれぞれ操作した.抑制障害をもつ慢性期の前頭葉損傷者を対象に研究2a及び研究2bのSRC課題を使用した直接刺激法による認知リハビリテーションをそれぞれ6ヶ月間おこなったところ,2つの研究のいずれにおいても,訓練後では,視覚刺激が示す左右と反応に用いる手が一致しない葛藤条件下での遂行が訓練前と比べて大きく改善し,患者の抑制機能障害が反復訓練によってある程度改善することが示唆された.また,NIRSの結果では,研究2aと2bのいずれにおいても,訓練前には葛藤条件に比べて統制条件の際に前頭前野の賦活が大きく認められたのに対し,訓練後には,統制条件より葛藤条件のときのほうが前頭前野の賦活が増す健常統制群と質的に類似した脳活性化パターンが観察されるようになった.以上の結果は,直接刺激法に基づいた抑制機能のCRが慢性期の前頭葉損傷者の行動面の改善のみでなく,脳内病変部位においても可塑的な変化をもたらす可能性を示唆しており,前頭葉損傷者の抑制機能障害を標的とするCRの有効性を行動及び脳血流面の双方から示すエビデンスとして位置づけられる.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
リハビリテーションで使用する評価・訓練課題の開発の遅れや訓練期間の延長のため
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では,今年度に2つの認知リハビリテーションを実施するよう計画しているが,これらのリハビリテーションで使用する評価・訓練課題の開発に際しては,大学生及び大学院生に研究補助を依頼し,課題開発のための基礎データの収集やそれらの分析にかける時間を短縮させることによって,研究の推進をはかりたいと考えている.
|
Research Products
(3 results)