Research Abstract |
認知症の問題は生活機能・対人関係の障害であるという観点から,認知症を関係障害と捉える立場がある(楢林,2007)。私たちが生活していく上で,他者との関係を保ち続けることは,よりよく生きていくために重要なことであり,そのために対人コミュニケーションが必要であると考えられる。このことより,認知症高齢者に関わる介護スタッフが,介護場面においてどのような認知症高齢者と関わることを難しいと感じているのかを明らかにするために,認知症高齢者の対人的コミュニケーション行動を要求行動と応答行動に分けて,これらの行動の特性を検討することを目的とした。本研究では,介護スタッフが認知症高齢者と関わる際にどのような表出行動に着目しているのかについて,面接調査と質問紙調査から検討していくこととした。 福井県介護福祉士会に研究協力を依頼し,介護福祉士会のケア研究会のメンバーが調査者となり,調査者が勤務する施設の認知症高齢者に関わる社会福祉士や介護福祉士またヘルパーなど100名を対象として面接と質問紙を実施した。面接は,調査的面接法(半構造化面接)を用い,面接内容は,ICレコーダーを用いて記録した。面接の内容は,堅田(1986)が作成した要求行動に関する質問紙を参考に作成した。要求行動の場面は,(1)食べ物の要求,(2)排泄の要求,(3)入浴の要求,(4)他者との関わりの要求の4つの場面を設定した。また,面接終了後に質問紙への回答を求めた。質問紙の内容は,堅田(1986)が作成した応答行動に関する質問紙を参考に作成した。応答行動の場面は,表情(ポジティブ)に対する反応があるかどうか,環境からの働きかけに対して,視覚,聴覚,味覚,嗅覚,触覚などの五感が反応するかどうかについて検討するために,14の質問を設定した。また,認知症の方の感情表出(ポジティブ・ネガティブ)が見られる場面や,関わりが難しい場面などについて3項目設定し,自由記述で回答を求めた。 今後,(1)認知症の進行に伴い,認知症高齢者の要求行動や応答行動がどう変化するのか,(2)認知症の進行に伴い,認知症高齢者に接する介護スタッフの観察視点が変化するのかについて検討する予定である。
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