Research Abstract |
本年度の研究目的は,談話分析による心理療法面接における会話の分析方法の開発を行うことであった。そのために,個々の発話の詳細な分析が可能なザトラウスキー(1993)の談話分析が,心理療法の面接の会話の分析として適用できるかどうかの検討を行った。解決志向アプローチ(SFA)の面接の逐語録(英文)について,談話分析を行ったところ,SEAのセラピストが行う会話の内容と機能を詳細に分析するために,以下のような改定が必要であることが明らかになった。 まず,ザトラウスキー(1993)では,発話の単位の定義を一人の参加者のひとまとまりの音声言語連続で,他の参加者の音声言語連続とかポーズ(空白時間)によって区切られるものとしている。しかし,SFAの面接では一人の発話の中に,内容や機能が異なる複数の発話が存在することが,頻繁に生じていた。そこで,発話の認定の単位を文法的な文のまとまりと,発話者の交代という2つの基準で行うことにした。次に,ザトラウスキーの分類に従って,発話機能を分析したところ,セラピストの発話機能は「情報要求」が非常に多かった。そこで,「情報要求」に下位分類を設定することにした。さらに,ザトラウスキー(1993)の分類に収まらない発話機能が明らかになった。具体的には,相手が言い淀んでいるとき,その言い淀んでいると思われる言葉を,先に述べる発話であり,「〈補足〉の注目表示」と名付けられた。 ザトラウスキー(1993)の談話分析の手法を心理療法の面接に適用した研究はこれまでに見られず,この手法を用い発展させることで,SFAを始めとした様々な心理療法面接の発話レベルの分析が可能になると考えられる。
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