Research Abstract |
本年度の研究目的は,談話分析と面接調査によって,解決志向アプローチ(以下,SFA)の質問の効果的な用い方・展開の仕方の検討を行うことであった。 談話分析による検討として,マスターセラピストによる面接ビデオの全逐語録を文字化し,セラピスト(以下,Th)とクライエント(以下,Cl)の発話を分類し,発話の機能,話談を認定し,談話構造を検討した。その結果,(1)面接の話談は主に「Clの好きなことや長所の指摘」,「Clが抱える問題の内容」,「Clによる問題への対応方法」,「Clの問題の再発を防ぐための方法の探究と明確化」からなること,(2)面接の前半でThが「Clの問題の再発を防ぐための方法の探究と明確化」について会話を始めると,Clはその話題には乗らず「Clが抱える問題の内容」についての会話に戻すことなどが示された。(2)の結果から,SFAを行う際にはまず「Clが抱える問題の内容」を十分に聞く必要性が示唆された。 面接調査による検討では,SFAの質問を効果的に用いるために,どのようなことに留意し,具体的にどのようなことを行っているかについてThを対象とした面接調査によって調べ,SFAの質問の効果的な用い方・展開の仕方を検討している。現在までに5名のThに面接調査を実施しており、次年度は、さらに5名に面接を行う予定である。なお,調査に先立って行われた予備的調査の検討によって,ミラクル・クエスチョンを行う前の注意点として,「受け入れやすい状態を作る」,「Clの状態をもとに使用可能かどうかを判断する」,「導入のタイミングを見定める」,「答えやすくするための前置きの言葉かけをする」が挙げられた。これまでの先行研究では,ミラクル・クエスチョン前に準備が行われているとの記述があるが,その具体的な内容は示されておらず,ミラクル・クエスチョンを効果的に用いる上での貴重な資料が得られたと考えられる。
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