Research Abstract |
本年度は,談話分析と面接調査による,解決志向アプローチ(以下,SFA)の質問の効果的な用い方・展開の仕方の検討を行った。 談話分析による検討として,マスターセラピストによる面接ビデオの逐語録をもとに,セラピスト(以下,Th)とクライエント(以下,Cl)の談話における「話段」(ザトラウスキー,1993)を分析し,Thによる,問題の話から解決の話への転換の仕方を分析した。その結果,(1)面接の当初から,「問題の内容に関する質問と回答」などの問題の話に関する話段に加え,「Clの好きなことに関する質問と回答」「Clの肯定的な行動の指摘」などの解決の話に関する話段が見られること,(2)「問題の再発を防ぐためにClが次にする必要があることに関する質問と回答」などの解決の話に関する話段をThが開始すると,「問題が生じる過程の説明」などの問題の話に関する話段をClが開始するというパターンが何度か見られること,(3)(2)のように,Thによる解決の話にClが乗らずに,問題の話の話段を開始した場合,Thは解決の話にすぐには戻さず,問題の話をある程度聞いた上で解決の話の話段に戻すことなどが示された。 面接調査による検討として,Thを対象に面接調査を実施し,SFAの質問の効果的な用い方・展開の仕方を検討した。分析の結果,例外探しを行う際のポイントとして,「例外が成功体験として認識されるのを待つ」,「例外の重要性を否定されたら,例外を強調しない」などが示されている。発見された例外をClが「成功体験」として肯定的に認識するとは限らず,またClは例外の重要性を否定する可能性がある。そのため,以上のようなポイントが,例外探しの質問を効果的に行うために重要となる。先行研究では,以上のような点は指摘されておらず,例外探しの質問を効果的に用いる上での貴重な資料が得られたと考えられる。
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