2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730586
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小山 慎一 Chiba University, 大学院・工学研究科, 助教 (40420913)
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Keywords | 頭痛 / 幻肢痛 / 神経心理学 / 光過敏性 / 可塑性 / 異種感覚統合 |
Research Abstract |
従来の神経心理学の研究対象は脳損傷患者における高次脳機能(知覚,認知,記憶,言語等)の障害であり,これらはすべて脳機能の低下に伴うパフォーマンスの低下を前提としている。一方で,脳機能の異常な亢進が原因で起こると考えられている頭痛や幻肢痛(交通事故等で失った身体部位に痛みを感じる現象)等の感覚症状は国内外いずれにおいても神経心理学の対象ではなかった。しかし,頭痛や幻肢痛も脳損傷と同様,生活に重大な支障をきたす神経症状であり,心理学的な評価も可能である。また,脳機能の異常な亢進という従来と反対め視点かち脳と心について考察することも重要だと思われる。頭痛に関しては,筆者らは光過敏性を定量的に評価する方法を開発し,片頭痛患者が健常群よりも光に敏感であることを確認するとともに,特定の性質をもった視覚刺激が片頭痛患者に特に強い不快感を与えることを報告した。また,看護師を対象にした疫学調査を行い,職位や部署が片頭痛の発症頻度に影響を与えることを検証した。幻肢痛に関しては,回復のプロセスを定量的に評価する方法を開発するとともに,上肢喪失後30年以上が経過した症例においてもミラーセラピーが有効であることを確認した。また,幻肢痛のミラーセラピーと同様の手続きを健常者に好して実施した場合に生じる錯覚(ラバーハンドイリュージョン)を詳しく調べることによって,触覚と視覚が統合される仕組みを明らかにした。これらの研究成果については,論文や学会発表および招待講演を通じて社会に広く公表した。これらの研究成果と関係して,痛みの緩和を工業製品のデザインに取り入れた事例について,日本経済新聞社より取材を受け,その内容が記事に掲載された(2009年9月28日日本経済新聞夕刊「らいふプラス暮らし新景」)。
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