Research Abstract |
本研究は,顔面表情認知過程に関する認知心理学的検討を実施し,その説明モデルを精緻化することを目的とした。今年度は実験・分析環境の整備と,第1実験に向けた予備的な検討を実施した。 実験環境の整備については,実験刺激となる線画表情図形,および顔画像セット(POFA,JACFEE)を用意し,その加工作業を進めた。日本人顔画像データベースFINDについては,日本大学文理学部顔情報データベース運営委員会と交渉を重ねた結果,次年度に使用申請の手続きを進めることで合意した。一方で,実験用コンピュータやチンレスト(顔面固定器)などの実験用機器を揃え,実験室に設置した。また実験用ソフトウェアE-primeを用いて,認知的判断実験用のプログラムを作成した。 予備的な検討では,線画表情図形を刺激とした表情認知テストを用いて,表情刺激に対する基本6表情カテゴリー(喜び,驚き,恐れ,悲しみ,怒り,嫌悪)の強度判断データを収集した。また,並行して個人の"曖昧さ耐性"に関する質問紙調査も実施した。この検討では線画表情の視覚的構造変数(湾曲性・開示性,口部傾斜性,眉・目の傾斜性)とカテゴリー判断の関係を探り,従来の知見の検証を行う。同時に,個人のパーソナリティ特性と表情認知特性の関係を探ることで,表情認知の個人差について検討する。現在,データ分析作業を進めているところであり,次年度には分析結果をまとめ,表情認知モデルの精緻化に向けてその知見を活用していく予定である。
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