Research Abstract |
研究1では,先行研究で得られた発話データについて追加分析を実施した。具体的には,清河・植田(2007)では発想の転換を必要とするルール発見課題を用いて,他者から示されるメタなサジェスチョンが表象変化に及ぼす影響を検討した。その結果,メンバー間のやりとりを橋渡しする教示が与えられれば,メタなサジェスチョンのみで表象変化が促進されるという結果が得られた。この結果を受けて,発話データについてプロトコル分析を実施したところメタなサジェスチョンによって,自らの思考内容を他者に説明するという活動が促され,そのことが,表象変化につながったものと解釈できた。 研究2では,洞察課題を用いて,他者の試行を観察することが解決成績に及ぼす影響を検討した。その結果,他者の試行を観察した場合には解決成績が高められるのに対して,観察対象が自分の試行の場合にはむしろ低められることが示された。この研究では,言語化の影響を検討しているわけではないが,観察対象が自らの試行であった場合の妨害効果の背景には,言語隠蔽効果と共通のプロセスが存在している可能性が指摘できた。 研究3では,解が一意に定まらない創造的問題解決課題として,アイデア生成課題を用いて,利用可能な情報の多様性と情報集約方略がアイデアの質に及ぼす影響を検討した。その結果,たとえ多様な情報が与えられたとしても,情報を集約する際にキーワードの重複に基づく集約が行われやすい傾向があること,また,実際に多様なアイデアを利用できた場合には独自性や新規性の高いアイデアが生成されることが示された。この研究では,アイデア生成課題の成否に関わる要因を特定することを目的としていたが,キーワードの重複に基づく集約方略が妨害的に作用することが明らかとなった。このことから,言語化教示を与えることでアイデア生成を妨害することが予測される。この点については,今後検証する予定である。
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