2009 Fiscal Year Annual Research Report
音楽がもたらす複合的な感性処理:局所的・大域的情報の統合過程の検討
Project/Area Number |
21730602
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
荒生 弘史 Hiroshima International University, 心理科学部, 講師 (10334640)
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Keywords | 感覚・知覚 / 音楽認知 / 感性 |
Research Abstract |
音楽が個人や社会生活に彩りを添えることは高い普遍性を持つ。音楽は、直接的な概念指示の機能は弱い一方で、一定の印象や感性を聴取者全般にもたらす点において特徴的である。和音に関しては、単体による協和感(e. g., Plomp&Levelt,1965)、複数の連なりとしての良さ(e. g., Krumhansl,1990)などをはじめ、印象に関与する要因が指摘されてきた。本年度は、「時系列における選択的評価課題」を用いて、これらの要因を統合的に扱い、印象の形成過程を検討した。本研究で用いる時系列における選択的評価課題は、「処理過程の相互作用」の検討において認知心理学で重視されてきた干渉(注意)課題を時系列事象に拡張し、かつ、感性評価の手法を導入したものである。この手法を用いることにより、先行和音(無視される)の後に出現する後続和音に注意を向け、その後続和音だけについて極力独立に「快-不快」評定を行う状況であっても、評価対象の「協和感」に加えて「(文脈との)つながりの良さ」が顕著な影響をおよぼすことを示した。このとき、独立に行うはずの評定に顕著な影響が生じたのは、対象となる和音の協和感が元々高い場合であった。とりわけ、非近親な先行和音が呈示された場合に、評定がより不快方向に変化した。元々協和感がそれほど高くない場合には、先行和音の効果は顕著には生じなかった。また、このような効果は、和音どうしの時間間隔が数秒程度であれば持続して作用する可能性があることが示された。以上の先行和音への無視困難性からは、「つながり」に関する感性処理が高い自動性を示していると考えられ、そのコントロールが困難であること、あるいは、各感性情報の誤帰属が生じることなどの背景が考えられた。
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Research Products
(1 results)