2011 Fiscal Year Annual Research Report
音楽がもたらす複合的な感性処理:局所的・大域的情報の統合過程の検討
Project/Area Number |
21730602
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
荒生 弘史 広島国際大学, 心理科学部, 講師 (10334640)
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Keywords | 感覚・知覚 / 音楽認知 / 感性 |
Research Abstract |
音楽は日常生活において高い普遍性を持ち浸透している。その背景の一つに、音楽の各要素自体の直接的な概念指示の機能は弱い一方で、一定の印象や感性を聴取者全般にもたらす点があげられる。本研究は、その最も基本的なものとして和音による感性情報の処理に関して、単体による協和感(e.g.,Plomp&Levelt,1965)、複数の連なりとしての良さ(e.g.,Krumansl,1990)の要因を取り上げ、複合的な要因に基づく印象形成過程を検討するものである。本年度はまず、和音単体での協和感の程度を前年度までの2段階から、中間段階を含む3段階に増加させるために、純音の合成と聴取および物理特性の正確さの確認をくり返しながら、新たな刺激セットの作成を行った。この刺激を用いて、協和感の異なる和音に対して、複数和音の連なりの良さがどのように影響するかを時系列における選択的感性評価課題を用いてより詳細に検討した。具体的には、二つの和音を継時的に呈示し、二つ目の和音の協和度を変化させるとともに、一つ目と二つ目の和音のつながりの良さを変化させる状況において、聴取者に二つ目の和音だけについて極力独立に快-不快の感性評価を行うことを求めた。感性評価データは、二つ目の和音自体の協和度の変化に応じて大きく変動するとともに、両和音のつながりのよさにより変動した。つまり、二つ目の和音だけについて独立に行うはずの感性評価が、一つ目の和音と二つ目の和音の関係性により変動することが示された。本結果は、関係性による効果が、協和度により変動する印象次元に影響することを明確に示すとともに、これが自動的に作用し、後続和音の印象形成に影響することを示している。音楽経験は、協和度自体の効果を増加させる一因となったが、関係性による効果には一貫した影響を及ぼさなかった。あわせて事象関連電位の計測環境の整備を進め、oddball課題を応用した関係性の効果を検証する予備実験に着手することができた。
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