2009 Fiscal Year Annual Research Report
加齢によるストレス脆弱性に基づく情動の調節機構解明
Project/Area Number |
21730609
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Research Institution | National Institute for Longevity Sciences,NCGG |
Principal Investigator |
昌子 浩孝 National Institute for Longevity Sciences,NCGG, 老年病研究部, 流動研究員 (00466278)
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Keywords | 加齢 / ストレス脆弱性 / 情動 / 前頭前野 / 扁桃体 / 神経伝達物質 |
Research Abstract |
本研究課題は、加齢により形成されるストレス脆弱性を反映する脳内機構を解明することを目的としている。平成21年度の研究では、若齢ラットおよび老齢ラットのストレス場面における情動行動の解析、血中コルチコステロン濃度の測定、前頭前野および扁桃体における神経伝達物質量の測定を行った。若齢ラットに比べて老齢ラットは、オープンフィールドテスト、高架式十字迷路テスト、社会相互作用テストにおいて移動活動量が低下し、かつ不安様行動が亢進していることが見出された。また、老齢ラットは、恐怖条件付けテストにおいて、最初に呈示した音刺激に対する恐怖反応が大きく、消去過程での恐怖反応は減弱していたことから、情動認知機能が低下している可能性が示唆された。血中コルチコステロン濃度については、急性ストレス負荷前および急性ストレス負荷後のいずれにおいても、老齢ラットと若齢ラットの間に差はなかった。不安や恐怖反応との関連が深い前頭前野や扁桃体などにおける神経伝達物質量を測定したところ、老齢ラットは若齢ラットに比べて扁桃体においてセロトニン放出量が多く、かつグルタミン酸放出量が少ないことを見出した。また、若齢ラットに対して前頭前野にセロトニン神経毒を投与し、老齢ラットと同様に前頭前野のセロトニン神経機能を減弱させたところ、扁桃体グルタミン放出量の低下が認められ、かつ不安や情動記憶が亢進していることが示唆された。これらの結果は、加齢により形成されるストレス脆弱性を反映する脳内機構が前頭前野や扁桃体における神経伝達物質放出機能の低下に基づいている可能性を示唆した点で重要である。
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