2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730613
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
添田 祥史 Hokkaido University of Education, 教育学部, 講師 (80531087)
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Keywords | ナラティヴ / ライフストーリー / ライフヒストリー / 物語論 / 識字 / リテラシー / 成人基礎教育 / 識字教育 |
Research Abstract |
本研究の目的は、物語論的観点から識字教育論を構築していくことにある。継続的な参加的研究を通して申請者は、識字と「解放」とをきり結んで捉える従来の識字教育論(以下、「解放の識字論」)では、正当に評価されない学習のあり方や学習者がいることを目の当たりにしてきた。理念に先立ち生身の人の思いや生き様から識字という営みを捉え直す必要があると考える。 そこで、申請者は物語論に着目する。物語論とは、人びとの間で構成される物語としてのナラティヴを読み解くことで、彼らに現前している世界を理解し、その世界への関与を可能にする方法論である。この方法論で識字学習者の語りを読み解いていくことで、新たな学習者理解が拓けてくるだろう。また、「自己とコミュニティの新たな物語の再構築過程」として識字実践を捉えることで、「解放の識字論」との理論的接合も可能になる。そして、なによりも、高齢化が進む識字の現場において、「書くことにこだわると出口が見えなくなる」という切実かつ喫緊の課題を解決する実践的切り口を提供することができるだろう。 本研究は4年計画で進められる。1年目である本年度は、申請者のこれまでの研究成果を叩き台に、国内外の関連する理論研究の知見を吸収しつつ、暫定的な理論を確定していった。その成果を積極的に発信し、意見交換に努めた。とくに、フランスの成人教育学の第一人者であるピノー氏を招いてのライフストーリーに関心のある若手社会教育研究者の研究会での意見交換は理論的課題への有意義な示唆を得ることができた。なお、当日のレジュメを加筆修正したものをフランスで刊行する予定となった。以上のように、計画通り研究は遂行されている。
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