2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730613
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
添田 祥史 北海道教育大学, 教育学部, 講師 (80531087)
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Keywords | ナラティヴ / ライフストーリー / ライフヒストリー / 物語論 / 親密圏 / 識字教育 / リテラシー / 成人基礎教育 |
Research Abstract |
2年目である本年度は分析ツールとしての物語論に関する理論的検討をふまえて、開発したその研究方法論で、実際のデータを分析した。成果は大きく4つである。 第一に、本科研の成果を博士論文としてまとめている。とくに序章部の方法論の検討部は、今後、識字教育研究のみならず社会教育研究においても一石を投じるチャレンジングなものとなろう。教育・社会・個人の関係構造の再創造という社会教育学研究の伝統的方法意識に立ち戻り、「解放の識字」論を展開できないかを構想中である。政治学者の齋藤純一や栗原彬などの議論と現代社会教育学を牽引する佐藤一子の議論とを交差させながら、親密圏概念を分析視座として導入することを検討している。親密圏として識字教室を描いていくというアイデアは、現場のリアリティを伝えるだけでなく、つぶやきが生まれ、そのつぶやきが共鳴し、<私たち>という主語で教室内外に波及していく様を説得的に描いていくことができよう。 第二に、昨年度フランスの研究者を招いて行った研究会での「解放の識字論」を物語論的に再読するという報告を加筆修正し、フランスのライフストーリーの研究雑誌に寄稿した。 第三に、分析ツールとしての物語論を援用した事例分析を試みた。夜間中学校教諭・見城氏の実践分析を行った。 第四に、識字教育・成人基礎教育保障にむけたアクション・リサーチを記録した。まだ論文にまでは至っていないが報告書やモノグラフとして蓄積したデータを発表した。
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