2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730613
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
添田 祥史 北海道教育大学, 教育学部, 講師 (80531087)
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Keywords | 識字 / 物語論 / 成人基礎教育 / ナラティヴ / ストーリー |
Research Abstract |
本研究の目的は、物語論的観点から識字教育論を構築していくことにある。物語論とは、人びとの間で構成される物語としてのナラティヴを読み解くことで、彼らに現前している世界を理解し、その世界への関与を可能にする方法論である。この方法論で識字学習者の語りを読み解いていくことで、新たな学習者理解が拓けてくるだろう。また、「自己とコミュニティの新たな物語の再構築過程」として識字実践を捉えることで、「解放の識字論」との理論的接合も可能になる。そして、なによりも、高齢化が進む識字の現場において、「書くことにこだわると出口が見えなくなる」という切実かつ喫緊の課題を解決する実践的切り口を提供することができるだろう。 4ヶ年計画の3年目にあたる本年度は、次の四つを柱に研究を行なった。一つ目は、物語論を基礎に識字教育理論を実践的に論じていく作業である。教室内外に波及する「私たち」ということばがどのように生まれ、働くのかに関して関連領域の成果をふまえつつ検討した。また、学習支援者が実践を語り合うことの意味に関する考察も行った。二つ目は、実際に地元市民と共同して釧路自主夜間中学「くるかい」という識字教育・成人基礎教育の場を組織し、学習支援に携わるなかで、実践と理論の整合性を検証する作業を行った。そうしたアクションリサーチの成果を学会報告し、論文としてまとめている。三つ目は、生活困窮者の学び直し支援のあり様と保障システムに関して検討を行った。四つ目は、これまでの研究成果を体系立てて整理し、博士論文としてまとめる作業に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の柱であった(1)物語論を基礎に識字教育理論を実践的に論じていく作業、(2)識字教育・成人基礎教育のアクションリサーチ、(3)生活困窮者の自立を支えるリテラシーのあり様に関する調査研究、(4)博士論文としてまとめる作業、の4点について予定通り進めることができたから。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね予定通り進んでいるので、最終年度も同様に進めていきたい。
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