2010 Fiscal Year Annual Research Report
死と生の教育史-近代イギリスにみる子どもと死をめぐる言説群-
Project/Area Number |
21730617
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
秋山 麻実 山梨大学, 教育人間科学部, 准教授 (90334846)
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Keywords | イギリス教育史 / 死生学 / 児童書 / ピューリタン |
Research Abstract |
22年度は、以下の2点を中心に研究を進めた。 第一に、17世紀プロテスタントの宗教書と子ども向け図書との関係性について調査・考察した。その結果、形式、内容における共通点と相違点が明らかになった。たとえば通常の宗教書においては、正しい信仰および生と死のあり方の「例」とは、原典としての聖書に求められるべきものであり、現実的で具体的な人物描写は「例」として位置づけられるものではなかったのに対し、子ども向けの宗教書においては、具体的な人物の物語に「例」としての地位が与えられた。その一方で、子供向けの宗教書においては、この「例」の物語こそが内容の中心を占めたのだが、その形式は、人物の生と死を物語化し、そこから信仰について学ぼうとするという大人のための本の潮流から影響を受けていたと推察された。さらに、こうして成立してきた子ども向けの宗教書は、登場人物が書籍の中で読書をするという入れ子構造から、登場人物が読者のモデルとなることで教育的効果を狙うというやり方において、近現代の子どものための本に多大な影響を与えたことが明らかになった。 第二に、ars moriendiおよびdans macabreという死の表現については、文献収集を行なうとともに、フランスに残存するdans macabreを実際に見学した。当初の仮定では、これらふたつの死の表現を、死を宗教的モメントとしてとらえる視点と、生活の延長上の具体的な作法と実践としてとらえる視点の接点として分析することが可能ではないかと考えていたが、史料を読み解くなかで、dans macabreの短命が、具体性や実践性がないことと関連があり、具体的・教訓的・実践的な語りが力をもったことに焦点を当てることが重要と考え、論文作成は見合わせた。
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Research Products
(1 results)