2010 Fiscal Year Annual Research Report
教育システムにおける学校分権の比較研究―財源・権限と責任の効果的配分
Project/Area Number |
21730632
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
末冨 芳 日本大学, 文理学部, 准教授 (40363296)
|
Keywords | 学校分権 / 学校予算 / 財源権限委譲 / 効率化 / イギリス |
Research Abstract |
本年度は、イギリス調査を実施し、また国内の学校分権の先進的都市(京都市、横浜市、西宮市、北杜市、南アルプス市等)に対するヒアリング調査を実施した。とくに各政府・自治体が学校を、権限、財源上、どのような存在として位置付け、いかなる財源、権限を付与しているのかという点に焦点を置いた分析を実施した。 この結果、日本国内では公務員定数削減や予算効率化のために学校に対する予算や権限の委譲を進展させる傾向が大都市を中心に検証された。一方で、地方小規模都市では議会や首長部局への予算削減への対抗策として学校と教育委員会の連携のもとで、学校予算の正当性・重要性の根拠を確保するために、学校に対し予算データを蓄積させ、また各学校での執行が予算の効率的運用に利するというアイディアのもとで学校分権が進展していることが明らかとなった。 一方で、イギリスでは、ブレア政権移行の改革で学校のアウトカムやマネジメントの向上に対し、財源の保障と予算執行権限の拡大が進展してきたが、保守党連立政権のもとで、地方当局(LA)の権限をさらに縮小し、学校をアカデミーという設置形態に移行させることでLAの関与を廃したより自由度の高い学校分権が進展中である。とりわけ、独自の教育改革や高いアウトカムを追求する学校ほど、アカデミー型学校分権を選好する実態も明らかとなった。 イギリス型の改革との対比で検討すると、日本では、学校のアウトカムやマネジメントの向上といった学校分権の目的は現在のところ強く意識はされておらず、行財政のスリム化の中で学校の自律性を高めることが有効ととらえられる傾向にある。しかしながら、学校分権が教育にとってより有効な機能を発揮するためには、その目的を明確化することが重要といえる。
|