2011 Fiscal Year Annual Research Report
夜間定時制高校教育と社会的排除のリスクを抱える若者支援に関する調査
Project/Area Number |
21730634
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
西村 貴之 首都大学東京, 人文科学研究科, 助教 (60533263)
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Keywords | 青年期 / 夜間定時制高校 / 移行過程 / 特別支援教育 / 生活指導 / 職業実習 / フィンランド / 特別活動 |
Research Abstract |
本研究は、夜間定時制高校を卒業した若者や教職員の聞き取り調査から、学校から就労への移行過程に困難を抱える若者を包括的に支援していくシステムを構築していくことを目指して、学校教育機関が担う機能の在り方を検討することを目的に進められている。本年度は、以下の調査研究を実施した。主たる調査対象校である首都圏の08年3月に廃課程となった夜間定時制高校(以下、U校)の元教諭W氏、H氏および元業務主任(給食)のK氏と、卒業生2名の聞き取りを行った。前年度同様に元教職員にはU校着任以前からU校から他校へ異動した後を含めた教職員生活と関連したかたちでU校における実践を語っていただいた。卒業生には前年度同様に、現在の生活状況、U校入学の経緯、高校生活そして進路決定を中心に聞き取りを実施した。10数年U校に勤務していたW氏、K氏からは90年代半ば以降学校づくりが展開される以前の、教職員が形成してきた学校文化の変容を中心に話をうかがうことができた。かつての勤労青少年を受け入れてきた時代の教員層(第一世代)と80年代の反学校文化を持つ生徒層を受け入れてきた時代に赴任した30代前半の若手教員層(第二世代)、そして90年代半ば以降の学校づくりを牽引するHK氏らが赴任してくる(第三世代)といったこれまでの教職員には大きく3つの中心層があり、第一、二世代の教職員がつくってきた文化が、その後の第三世代の層の学校づくりの土台になっていたことが仮説的知見として浮かび上がった。またH氏はすでにU校の学校づくりが成熟した後08年3月に廃課程される前年度までの4年間U校で実践をしてきた立場から振り返っていただいて語っていただいた。卒業生の調査では、義務教育の期間に不登校を経験してきた彼らがその負の経験を克服していった前年度同様のストーリーを聞くことができた。また2人は卒業後パートタイマーで勤務している職場の同僚性構築について、高校時代の特別活動の経験(主に学校行事での取り組み)が活かされていると語っており、学校づくりによってもたらされた教育的効果がその後の移行にどのような影響を与えているのか考えるデータを得られた。個別ケースに即してより丁寧な分析をしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
不安定な社会生活を送っている若者との目程がなかなか調整できず当初の計画ほどには対象者の捕捉が進んでいないため、「やや遅れている」との評価にした。しかし、1人ひとりのライフストーリーを聞いているため(1人あたり3時間はくだらない)、そのような観点からすると捕捉数は少ないものの丁寧に聞き取りをしているため、有益なデータを得られている点では、想定していた以上の質の高い調査となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる24年度においては、(1)これまでに入手してきたデータ(インタビューデータ、学校要覧等行政資料、U校の教育実践に関する資料等)を多角的に分析することで、U校の学校づくりがどのような点で社会的排除のリスクのある若者にとっての教育支援を果たしてきたのかを描く。(2)社会的排除のリスクのある若者をターゲットにした学校から仕事への移行に効果的な教育プログラムを制度化したフィンランドの取り組み(JOPO)に関して入手したデータを分析しその知見を整理していく。上記研究に関する補足調査を早期に実施していきながら、年度末には本研究成果をまとめていく予定である。
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