2011 Fiscal Year Annual Research Report
シュタイナーの人間観と芸術論を基盤とする言語教育論の解明とその実態に関する研究
Project/Area Number |
21730641
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
柴山 英樹 聖徳大学, 児童学部, 准教授 (60439007)
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Keywords | シュタイナー / 言語教育 / 教育思想史 / 教師の語り |
Research Abstract |
本年度は、イギリス・アメリカ・日本におけるシュタイナー学校の言語教育に関して、文献調査・実地調査・インタビュー調査による実態調査を行った。シュタイナーの言語教育思想は、詩人ゲーテにおける科学と芸術の根源の同一性という思想を基盤に、ドイツ語圏の教育実践のために構想されたものである(論文「シュタイナーにおける言語と世界の認識の関係」)。それゆえに、英語圏や日本語圏という異なる言語や文化において、シュタイナーの言語教育思想を即座に展開することはできない。 イギリス・アメリカのシュタイナー学校高等部のカリキュラムの中には、英語の進化や詩の芸術的要素など、詩がどのような経験をもたらすのかについて議論しつつ、言語と意識の進化について、歴史的に考察することなどが示唆しされている。また、コールリッジなどの詩を体験しながら、想像力による切り離された世界との再結合を試みることが青年期の生徒には必要であるとされている。 このようなカリキュラムの背景として、イギリスの文学者であるオーエン・バーフィールドが展開した言語思想の影響などが挙げられる。彼は、人間の意識の進化の記録が言語の歴史から解明できると考え、シュタイナーの進化論(『シュタイナーの教育思想』第三章)と言語思想などの影響を受けながら、英語の変化に着目した研究を展開した。また、バーフィールドは、シュタイナーがゲーテの思想に見出した物質と精神の参与を、コールリッジが見出した「想像力」の概念に見出し、物質と精神の間のつなぐ想像力の役割を強調したのである。 以上のように、異なる文化圏においてシュタイナーの教育思想を実践する場合、単にシュタイナーの思考様式を適合させるのではなく、その言語や文化に関する独自の研究視点に基づいて、言語の性質や文学教材の本質を洞察することが不可欠なのである。
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