2011 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ・リベラル改革の市民性教育と民主主義-デューイの学校論の実践的展開-
Project/Area Number |
21730644
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
上野 正道 大東文化大学, 文学部, 准教授 (50421277)
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Keywords | 市民性 / 民主主義 / 学校改革 / リベラリズム / デューイ / 公共性 |
Research Abstract |
本研究は、アメリカの哲学者であり教育思想家でもあるジョン・デューイが構想した市民性教育と民主主義の教育について、その思想的、哲学的な考察を進めると同時に、彼の構想が実際の学校改革に与えた影響とその実践の内実を考察し明らかにすることにある。これまでの研究で、民主主義や公共性の概念を、市場や国家の実体的な領域に回収して公教育を論じることに代わって、対話的で協同的なコミュニケーション活動を軸に市民性を位置付けたうえで、それによって開かれた学校論の個別具体的な思想と実践を取り上げて検討してきた。平成23年度の活動として、特に力を入れて取り組んだのは、従来、デューイの思想研究や実践研究がアメリカ国内の先行研究や事例研究に偏重し、アメリカの思想的、社会経済的、文化的な文脈の内側からのみ接近する傾向があることを問題点として考え、ヨーロッパやアジアの思想との交流や差異、類似点を交える観点から、再度、デューイの思想を対象化し直すことを試みた。すなわち、平成23年2月に、ドイツ、ケルン大学デューイ研究センターを訪問して、ヨーロッパ的視点からのデューイ研究について示唆を得たのに続いて、平成23年9月には、ウィーン大学とロンドン大学を訪問し、デューイの思想とヨーロッパ思想とが交差する論点について理解を深めることにした。そもそも、デューイの思想は、ヨーロッパ的なリベラリズム思想や民主主義思想からの影響と、それに対する対抗、そして新たな交差の中で成立している。そのことを研究する意義と重要性は、アメリカ研究とヨーロッパ研究との新たな関係と交流を考察し、市民性と民主主義を主体とした学校改革をより深い水準で立体的に描出することにある。平成23年度の研究においては、それらの重要な手掛かりを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
教育におけるリベラリズムと民主主義の思想についての研究が進展し、学校改革の具体的なヴィジョンの輪郭が明らかになりつつあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、デューイの思想を、東アジアや西ヨーロッパの思想と対話させながら考察を進めることがあげられる。とくに、リベラリズム、民主主義、公共性をめぐる概念理解には、アメリカ国内に限定された視点を超えて研究を進めることが不可欠となる。また、デューイの学校改革の構想は、現在、アジアやヨーロッパの教育をはじめ、世界的に大きな影響力をもっている。本研究の意義と独創性は、市民性教育の思想と実践を、そのような立体的な形で描き出すことにある。
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Research Products
(3 results)