2011 Fiscal Year Annual Research Report
「学校の多様化」政策に着目した現代イギリス中等教育改革についての実証的研究
Project/Area Number |
21730645
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Research Institution | Nishikyushu University |
Principal Investigator |
青木 研作 西九州大学, 健康福祉学部, 講師 (20434251)
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Keywords | イギリス / 教育政策 / 教育行政 / 公教育制度 / 中等教育 / 学校の多様化 / 教育プロバイダー / 宗教系学校(faith school) |
Research Abstract |
本年度は、以下の2点についての調査研究を実施した。 1.「学校の多様化」政策がイギリス中等教育制度に与えた影響についての検証 イギリスでは1997年から2010年までの労働党政権下において「学校の多様化」政策が展開されてきた。教育内容や学校経営の面で特色をもつ学校の増加を意図したこの政策を通じて、協同的・補償的・応答的な特徴をもつ中等学校制度を創出することが政府の狙いであった。しかし、こうした政策は往々にして学校間の競争の激化、格差の拡大をもたらし、公教育制度の公共性を損なう結果を招くことは歴史が証明してきた。今年度の研究では、過去2年間の研究を踏まえながら、労働党政権が進めた「学校の多様化」政策が中等教育制度の公共性にどのような影響を与えたかについて一つの答えを提供している。それは、公共性の一側面である「社会の一体性」に限ってみれば、「学校の多様化」という状況が必然的に公共性を損なう結果をもたらすのではなく、その状態において政府、学校供給主体、学校がどのように振る舞うかによって決まるということである。この研究の成果については、政府の取り組みに注目した研究を日本比較教育学会の学会誌である『比較教育学研究』で発表し、学校供給主体ならびに学校の取り組みに注目した研究を日英教育学会と関東教育学会の年次大会で発表した。 2.本研究結果についての確認調査 上述した本研究の結論について確認を行うために現地調査を実施した。保護者団体が設立した中等学校であるエルムグリーン・スクール、ユダヤ教中等学校であるJFS、ユダヤ教学校の支援団体を訪問し聞き取り調査を行った。各学校はステークホルダーやコミュニティとの関係から公共性とのバランスに苦慮する面もみられたが、「社会の一体性」については本研究の結論が一定の妥当性をもつことを確認できた。
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