2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730652
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Research Institution | Konan Women's University |
Principal Investigator |
伊藤 実歩子 甲南女子大学, 人間科学部, 准教授 (30411846)
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Keywords | オーストリアの教育 / 教育スタンダード / 労作教育 / 陶冶学校 / スタンダードテスト |
Research Abstract |
今年度、学会発表およびそれをふまえた雑誌論文においては、研究目的にあげた戦後から現代の教育観の変遷という観点から歴史的研究を行った。ここでは、オーストリアの現在の教育動向として、PISAの結果をふまえた教育スタンダードの導入が実施されていることを、オーストリアの教育史の中に位置づける試みを行った。 考察の結果、オーストリアをはじめとするドイツ語圏には、これまでテスト文化がなく、1920年代の教育改革で導入された労作教育などによって、子どもの学習のプロセスを重視する教育を行ってきたことが明らかになった。それは、本発表および論文で考察の対象とした第二次世界大戦後の教育においても「陶冶学校」という実践的概念として継続されたものであった。このような歴史をふまえると、現在、オーストリアをはじめドイツ語圏で導入、実施されている教育スタンダードおよびその達成度を測るスタンダードテストは、相容れないように見える。 次に、『〈新しい能力〉は教育を変えるか-学力・リテラシー・コンピテンシー-』では、オーストリアにおける教育スタンダードの導入に関する論文(「オーストリアの場合-PISA以後の学力向上政策)を執筆した。本稿では、教育スタンダードの実際を、実践モデルとともに提示したうえで、この学力向上政策に対する批判を取り上げた。批判としては、子どもの何をはかろうとしているのかが明らかでないあいまいなスタンダードであること、また、テスト文化がないことによる評価一般に対する理解の不足があげられた。
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Research Products
(3 results)