2010 Fiscal Year Annual Research Report
新教育における学校図書館の理論と実践に関する実証的研究
Project/Area Number |
21730656
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Research Institution | Minami Kyusyu University |
Principal Investigator |
國枝 裕子 南九州大学, 人間発達学部, 講師 (90513078)
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Keywords | 教育史 / 大正新教育 / 学校図書館 |
Research Abstract |
本年度は研究計画に基づき、昨年度収集した学校図書館と大正新教育期の新教育方法との関連について考察するための資料収集の継続とその分析にあたった。当時西欧から受容された新教育法に関する1920~1930年代の雑誌記事や関連書籍の内容を分析した結果、子どもの自発的な学びを促す存在として、学級文庫なり学校図書室なりの図書の存在が必要不可欠な学習環境として、どの新教育法においても取り上げられていたことが明らかとなった。 さらに、新教育方法を受容しつつ教育実践を展開していたと目される新学校での教育実践における学校図書館の位置づけの検討という課題について、昨年度収集した東京高等師範学校附属小学校の学校図書館に加え、奈良女子高等学校附属小学校の学校図書館に関する資料収集も行なった。これらをもとに考察したところ、例えば東京高等師範学校附属小学校の訓導小林佐源治の場合、ささやかではあるものの教室の一隅に本箱を置いた「学級図書館」を備えるという実践を行なっていたことが分かった。また、調査した学校日誌などを分析した結果、奈良女高師附小の木下主事の下では、職員会などで「学校図書室」「学級図書室」について、その充実が目指されていたことが確認出来た。実践面でも、例えば秋田喜三郎訓導は教室の図書室化、教室の学習室化を目指した教育実践を行っていたことが確認された。こうした実践からは、公共図書館と同じように読書趣味の涵養を目的とする学校図書館ではなく、学校教育に不可欠な存在として学校図書館固有の意義を見いだし生まれた教育実践が、すでに大正新教育期にあったことが明らかとなった。これまでの学校図書館史研究で、戦前の学校図書館の到達点と評されてきた事例の再検討にあたっては、看過されてきた多くの資料を収集し、分析することで、学校図書館を活用した教育実践の具体相を掘り起こすことができた。
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