2011 Fiscal Year Annual Research Report
大学進学行動と大学教育の経済・社会的効果に関する基礎的実証研究
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21730671
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
島 一則 広島大学, 高等教育研究開発センター, 准教授 (70342607)
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Keywords | 大学進学 / 経済的効果 / 収益率 / 賃金 / 大学教育 / 教育経済学 |
Research Abstract |
研究三年度の平成23年度においては、前年度に引き続き、I.進学行動の経済学・社会学的分析の融合のための文献研究(教育経済学・高等教育研究を中心)と、II.大学教育の経済的効果(教育経済学を中心)に関する文献研究・さらには研究初年度入力データに基づいて、昨年度算出した男子大卒者の産業・企業規模別クロス収益率(2000年度)との比較のため、1980年度の産業・企業規模別クロス収益率を算出した。なお、産業・企業規模別収益率とは、高卒者の産業・企業規模別の賃金プロファイルと大卒者の産業・企業規模別の賃金プロファイルの組み合わせに基づき、すべての高卒就職パターンとすべての大卒就職パターンの組み合わせに基づいて、それぞれの場合の大学への進学の経済効果について計測するものである。これらの結果からは、大学進学の経済効果には、高校卒業後どのような産業・企業規模の会社に就職できるかという可能性と、同様に大学進学した場合に、卒業後どのような産業・企業規模の会社に就職できるかによって、により大きなばらつきがあることが改めて明確になった。実際、産業計・企業規模計での高卒・大卒比較(国立大学進学を仮定)の場合、大学進学投資の収益率が6.7%存在する場合においても、暫定的分析によれば、すべての高卒・大卒就職先の組み合わせ数(4624)のうちの、大学進学によって経済効果が生じる組み合わせは1392組、30%にとどまることが明らかになった。一方で1980年(大学進学投資の収益率)においてはこの値が48%となっており、20年間の間に、進学による経済効果が生じる「就職パターン」そのものはより少なくなっていることが明らかになっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度計画に基づき、多様な教育歴・キャリア(産業別・企業規模別)を想定した収益率の計算を行う一方で、大学教育の社会的効果に関する文献集と整理を進め、それに基づいたメタ分析の取り組みを開始するなど、計画通りに作業が進捗しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に向けて、従来の作業を計画通り進めつつ、取りまとめ作業を実施するとともに、研究成果の公表を進める。
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Research Products
(2 results)