2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21730697
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
冨安 慎吾 島根大学, 教育学部, 講師 (40534300)
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Keywords | 教育学 / 国語科教育 / 教育史 / 漢文教育 |
Research Abstract |
本研究では、以下の三本の軸を設けている。 a.教科書教材の分析 b.研究者・実践者におけるパラダイム意識の分析 c.実践/研究個体史の析出平成22年度においては、特にbおよびcについての研究を行った。 bとしては、昭和45年に改訂された学習指導要領について、研究者および実践者が示した反応についての分析を行った。当該の学習指導要領は、35年に行われた「現代国語」と「古典に関する科目」との分立を受け継いでいる点で、大きな変化を起こした学習指導要領ではない。この分立は、大勢においては評価され、受け容れられている。しかし、研究者および実践者の中には、分立によって「古典に関する科目」がその目的を不明確にしていることを批判するものがみられた。続く昭和53年の学習指導要領において、分立が部分的に廃止され、総合的な科目「国語I」が設置されることを考慮すると、昭和30年代と昭和50年代との間の過渡期である昭和40年代において、上記したような思想の芽生えがみられることが明らかになったことは重要である。 cとしては、前年度に引き続き江連隆の実践/研究個体史を析出するとともに、南本義一の実践/研究個体史を新たに析出した。これらの研究個体史については、bにおいて検討した時代背景を考慮して検討することによって、両者が、その模索の方向性は異なるものの、ともに不明確になっている漢文学習の意義を再定義するものとして共通性を持つものであることが明らかになった。 以上、本年度の成果は、昭和40年代における漢文教育思潮を明らかにする上で、その実態についての調査を行うことができた点にある。30年代のパラダイムと50年代のパラダイムとの変節点という視点を導入することによって、戦後における漢文教育の課題に直面した年代として、昭和40年代を捉え直すことができると考えられる。
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