2010 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀初頭米国通学制聾学校における口話法への転換の教育的・社会的意義
Project/Area Number |
21730724
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
木村 素子 宮崎大学, 教育文化学部, 講師 (60452918)
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Keywords | 特別支援教育学 / 聴覚障害教育学 / 通学制聾学校 / 口話法 / アメリカ合衆国 |
Research Abstract |
本研究は、寄宿制聾学校という分離的な環境における教育から、どのように通学制聾学校が発展したのかを、その発展に大きな役割を果たした口話法がどのように伝統的な手話法に取って代わったのかについて明らかにすることを目的としている。対象都市は、19世紀末に創設され20世紀初頭に発展するイリノイ州シカゴ市、ウィスコンシン州ミルウォーキー市であるが、平成22年度は、以下の2つの研究課題に取り組んだ。第一に、ウィスコンシン州、ミルウォーキー市の聾教育関連の資料収集を行い、第二に20世紀転換期シカゴ通学制聾学校における教育の実態の解明のため、資料読解と分析を行った。 第一については、とくにウィスコンシン州立聾唖院年次報告を入手することができた。第二については、通学制聾学校における「社会的統合」に焦点を当てて、口話法による社会的統合について検討したところ、口話教育を受けた生徒のなかに、卒業後に聾当事者のコミュニティへ参与したり、口話を用いる聴覚障害者同士の団体を組織したりする事例があることがわかり、このような事例が通学制聾学校卒業生においてどの程度一般性をもつのかを明らかにすることが課題であることがわかった。さらに、私立聾唖学校との対比から通学制聾学校の発展について検討したところ、19世紀末のシカゴの事例では、公立通学制聾学校ではなく、私立カトリック聾唖学校が貧困層生徒とカトリック系子女を、私立聾幼児学校が口話法教育を求める親の子女を受容していたことがわかった。これらの研究成果については、特殊教育学研究、The21^<st> International Congress on The Education of the Deaf、日本特殊教育学会等において発表した。 震災により実施することができなかった定例研究会についての平成22年度繰り越し分については、平成23年度に定例研究会の旅費として使用した。
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