2009 Fiscal Year Annual Research Report
1979年度から1987年度間の海外日本人学校における障害児教育の歴史的研究
Project/Area Number |
21730727
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Research Institution | Tokyo Seitoku University |
Principal Investigator |
那須野 三津子 Tokyo Seitoku University, 子ども学部, 講師 (00383464)
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Keywords | 教育学 / 社会福祉関係 / 特別支援教育 / インクルージョン / 日本人学校 |
Research Abstract |
日本政府が、国会の答弁で、日本人学校への障害児教育担当教員を派遣することにはじめて言及したのは1988年度であった。この国会でとりあげられた当該教員の派遣先はニューヨーク日本人学校であった。その前年に、シンガポール日本人学校が独自に障害児教育担当教員を採用していたことは、日本人学校への当該教員の派遣の必要性を裏づけるものであったと捉えられる。同教員の採用経緯について、派遣教員による実践記録をみると、その内容が個別の事例に特化したものであったり、派遣教員の任期の短さに制約を受けたものであったため分析することが困難であるという課題があった。また、日本人学校は外国にあり、当事者や学校関係者が帰国や第三国へ移動することもあり、当時の史料が散逸・消失する恐れが高く、関係者が存命中にデータを収集することが急務の課題であった。このような状況を踏まえ、平成21年度は、まず、シンガポール日本人学校の障害児教育着手の経緯について明らかにするために、これまでに得られた資料の分析を行い、その結果を当時の関係者に送付し、確認の必要が生じた事項については再調査・分析を行った。その結果、同校で障害児教育着手の契機となった児童の入学願書が1979年度に提出された背景には、対象児の学齢始期が1980年度であったという個人的な要因と、対象児の入学願書を提出する1979年度に日本国内で全員就学の動向を背景とした養護学校義務制が実施されたという社会的な要因の一致がみられた。あわせて、対象児のきょうだいが事例校に在籍していたという個人的な要因のあったことも明らかになった。同校で保護者の付き添い等を条件に受け入れの検討がなされた経緯については、地域の状況や学校運営の実態等に影響を受けていた可能性が示唆されたため、この点については今後検討する予定である。
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