2009 Fiscal Year Annual Research Report
モチーフのL関数と一般超幾何関数および一般多重対数関数の研究
Project/Area Number |
21740002
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
大坪 紀之 Chiba University, 大学院・理学研究科, 助教 (60332566)
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Keywords | 数論幾何学 / モチーフ / L関数 / 一般超幾何関数 / 多重対数関数 / 代数的サイクル / モチーフ的コホモロジー / ベイリンソン予想 |
Research Abstract |
本研究の目的は,モチーフのL関数と一般超幾何関数,多重対数関数の関係を調べることである.今年度は主に,フェルマー曲線のヤコビ多様体のアーベル=ヤコビ写像(ホモロジー的に自明な代数的サイクルに対する,Deligneコホモロジーへのレギュレーター写像とみなせる)と,一般超幾何関数の特殊値の間の関係について研究した.アーベル=ヤコビ写像はL関数の関数等式の軸における零点の位数と関係があると予想されており(Birch=Swinnerton-Dyer),このような不変量が超幾何関数と関係するという発見は重要である.曲線のk回対称積は,Ceresaサイクルと呼ばれるホモロジー自明な代数的サイクルをそのヤコビ多様体上に定めるが,k=1の場合,そのアーベル=ヤコビ像はB.Harrisによる調和体積という反復積分で定義される不変量と関係する.これは一般には計算が難しいが,フェルマー曲線の場合にそれを一般超幾何関数(Barnesの3F2,またはAppellのF3)の特殊値で表した.また,kが一般(k<g-1,gは種数)の場合にもk=1の場合に帰着することでアーベル=ヤコビ像を計算した.ある特別なホッヂ構造をもっ微分形式上でその値を見ることで,Ceresaサイクルが代数的同値に関しても非自明であるための十分条件を与えた.この条件は計算機で検証可能であり,実際に計算を行うことで多くの具体例を与えることができた.このような例は(k=1でも)あまり知られておらず,新しい例を与えることには意義がある.また,曲線そのもののレギュレーターと一般超幾何関数の特殊値との関係との比較の点からも,数論的な新しい現象を示唆していると期待できる.
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